江戸小紋の魅力
しなやかに着る人に寄り添う〝江戸小紋〟の魅力
![]() 江戸小紋は、江戸時代より長く継承されてきた職人技によってその美しさを進化させてきました。 |
江戸小紋の色は単彩です。近頃では多色使いの江戸小紋もありますが、基本は単色です。単色なので、とても色にこだわっています。 |
![]() ![]() 【遠目で見ると】 【近くで見ると】 |
このように微細で微妙な領域に美を求め続けることで、江戸小紋は完成しました。実は「ぜいたく禁止」が生み出した最も贅沢な美の世界かもしれません。 |
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江戸小紋の柄 江戸小紋の細かな柄には、それぞれ様々な意味がうめこまれています。 まず、江戸小紋は武士の裃(かみしも)から発達したものですので、柄の基本は裃の模様からきています。他の藩との区別を象徴するため、徳川将軍家の「御召十(おめしじゅう)」、紀州徳川家の「極鮫(ごくさめ)」、加賀前田家の「菊菱」など、各藩で「定め小紋」を決めてそれぞれの柄を占有していました。 江戸中期になると庶民の間にも小紋染めの着物が流行りだします。定め小紋にはない動植物や日用品を図案化した「いわれ小紋」が発達しました。「桜」「露芝」「梅」「千鳥」や「大根とおろし金」「扇」「宝づくし」など、他にも「雪月花」「家内安全」など文字を意匠化したものなど、江戸っ子のユーモア感覚を表した柄が無数に生み出されました。色合いのみならず細かな柄がそれぞれ持つ意味合いにも注目すると、江戸小紋の魅力は計り知れないものです。 |
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京小紋や京友禅は、たくさんの色使いで華やかな花鳥風月の文様が目にも鮮やかで優雅なお着物です。満開の花のような匂いたつ美しさに心を奪われます。 それにひきかえ、江戸小紋は、渋くおさえた伝統色の単彩のみで、文様は抽象化された幾何学文様であり、あまりにも細かくて近くに寄らなければわからないほどです。 けれども、だからこそ、華やかな友禅などと違い、着る人にしなやかに寄り添うことができます。あくまでも主役は着る人なのです。その方の人柄、やさしさや愁いによく調和し、ほどよく着姿を整えてくれる、そんな不思議なお着物です。 ![]() 普段のちょっとした出来事に、一度袖を通してみられませんか?少し背筋が伸びて凛として、やさしくなれて、いつもとは違う丁寧な一日になるかもしれません。ちょっとした素敵な一日を積み重ねて、長い人生を愛しんで過ごしていかれますよう。 変わらない日本のやさしさと美しさのために、“染一会”では、江戸時代からえんえんと愛され続けてきた江戸小紋の魅力をお伝えしていきたいと思います。 |